事例3 送迎事故
相談事例の概要
- デイサービスセンターの利用者を送迎する際に転倒させてしまい、大腿骨頸部に骨折が生じ、後に既往症の増悪により死亡してしまった事案。
- 当初は退職までの未払賃金相当額の請求を受け、紛争の長期化も予想されたが、相談者との話し合いの結果、迅速な交渉による早期解決を実現し、解決までの4か月分の賃金相当額の解決金による示談が成立。
相談内容
相談者は、デイサービスセンターを運営しているところ、同センターの従業員が利用者を送迎する際に利用者を転倒させてしまい(本件事故)、利用者に大腿骨頸部骨折が生じ、その後、心不全により死亡してしまった事案です。
利用者の遺族から、相談者に対し、本件事故は、同従業員が荷物を持ちながら介助を行ったため不注意で生じたものであり、その結果、利用者が死亡したとして、使用者責任(民法715条1項)及び債務不履行責任(同415条)に基づき、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料、死亡逸失利益等の合計約4000万円の賠償請求がなされました。
当事務所の対応
まず、利用者の遺族は、本件事故と利用者の死亡との間に相当因果関係が認められることを前提として損害賠償請求を行っているところ、相当因果関係を認めるに足りる事実関係が確認できないことを指摘し、死亡結果に対する損害賠償責任を否定する一方、協議による解決のため、解決金として約250万円を支払うことを内容とする示談を提案しました。
これに対し、利用者遺族側から、死亡診断書や照会回答書等の資料が追加で提出され、本件事故により生じた大腿骨頸部骨折が、既往の慢性心不全の増悪に影響を与えたおそれが生じたため、示談金を約800万円に増額して再提案を行いました。
さらに、遺族側からは、本件事故後の相談者側の対応について強い不満が示されたため、改めて通所介護の責任者から正式に謝罪を行う用意がある旨をお伝えしました。
加えて、二度と本件事故のような転倒事故が生じないよう、本件事故の発生原因を検証し、関係部署に注意喚起を徹底するとともに、従業員マニュアルの改訂などの再発防止策を講じ、その旨を遺族側にお伝えしました。
結果
結果として、当方の対応により、利用者遺族側から納得を得ることができ、相談者から利用者遺族に対して約800万円の解決金を支払うことで示談が成立しました。