事例1 残業代請求
相談事例の概要
- 一部診療科の廃止に伴い、同診療科の勤務医について雇止めを行った後、残業代の請求を受けた事案。
- 当初は約2500万円の請求を受けたが、交渉した結果、約1000万円の解決金による示談が成立。
相談内容
相談者は、総合病院を運営しているところ、組織改革の一環で一部診療科を廃止することとなったため、同診療科に勤務する医師について、2年間の有期労働契約を更新せずに期間満了をもって退職させたところ(いわゆる雇止め)、同勤務医から、退職金に加えて未払割増賃金(残業代)の請求を受けたため、顧問弁護士である当事務所に相談があった事案です。
まず、相手方勤務医からは、代理人弁護士を通じて、割増賃金の算定に必要な資料として、賃金台帳、タイムカードのほかに、電子カルテ・ログの開示が請求されました。
当事務所の対応
相手方勤務医からの開示請求につきましては、対象資料が文書提出義務の対象である法律関係文書(民訴220条3号)に該当し、いずれにせよ裁判では提出義務が課されることから、話し合いによる解決を優先し、任意での開示に応じました。
これらの開示を受けて、相手方勤務医は、①割増賃金算定の基礎となる賃金について、各種手当を含めた上で、②労働時間については、電子カルテ・ログ上のログイン・ログアウト時間を基準として割増賃金を計算し、約2500万円の請求を行いました。
これに対し、当方からは、①基礎賃金について、住宅手当や当直手当が含まれないこと、並びに②労働時間について、許可基準の範囲内で宿日直業務を行っているため、宿日直時間は労働時間に含まれないこと、及び電子カルテ・ログ上のログインから最終ログアウトまでの間に許可なく外出していた時間が多く含まれていることを反論し、証拠として同部署の医師の証言や職員の業務日誌を証拠として提示しました。
結果
結果として、当方の対応により、①割増賃金の算定基礎となる賃金の引き下げ、及び②労働時間の短縮の双方に成功し、相談者から相手方勤務医に対して約1000万円の解決金を支払うことで示談が成立しました。