医療法人の運営
目次
1 医療法人の機関
社団医療法人を例にとると、医療法人の各機関は、最高意思決定機関である社員から構成される社員総会、業務執行機関である理事から構成される理事会、監査機関である監事に分かれています。株式会社でいうと、それぞれ株主総会、取締役会、監査役に相当します。
(1)社員総会
- 社員総会は、社員で構成される社団医療法人の最高意思決定機関であり、理事・監事の選任・解任、事業報告書等の承認などを行います。
- 社員総会は少なくとも年1回開催するものとされていますが(医療法46条の3の2第2項)、厚生労働省のモデル定款においては収支予算の決定と決算の決定のため年2回開催するものとされており、通常は年2回開催されます。
- 理事長が必要と判断した場合には臨時社員総会を招集することができます。なお、社員の5分の1以上が議題を示して招集を請求した場合、理事長は20日以内に社員総会を招集しなければならないとされています。
- 社員総会において社員は1人1個の議決権を行使することができるとされ、出資額や持分割合により変わることはありません。
(2)理事会
- 理事会は、理事で構成される社団医療法人の業務執行機関であり、医療法人の業務を決定、理事による職務執行の監督、理事長の選任・解任などを行います(医療法46条の7第2項)。
- 理事会は少なくとも3か月に1回開催するものとされていますが、定款により年2回の開催と定めることも認められています。
- 次のような医療法人の重要な事項については理事会で決議しなければならいなとされています(医療法46条の7第3項)。
- 重要な資産の処分及び譲受け
- 多額の借財
- 重要な役割を担う職員の選任及び解任
- 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
- 役員等の損害賠償責任の免除
- 各理事には必要と判断した場合に理事会を招集することが認められています。
- 理事会において理事は1人1個の議決権を行使することができます。
2 社員・役員
社団医療法人では、役員について原則として、理事を3名以上、監事を1人以上選任しなければならないとされており、さらに理事は理事の中から理事長を選出するものとされています。
以下では、社員と役員の違いにも触れながら、それぞれの医療法人における役割について解説いたします。
ア 社員
- 社員は、社員総会において医療法人の重要事項を決定する役割を担っており、株式会社でいうと株主に相当しますが、株式会社と異なり出資は必要とされず、拠出した財産によって議決権の内容が異なるということもありません。また、配当を受け取ったり、払戻しなどが認められていない点も特徴です(ただし、持分ありの社団の場合、出資社員は退社時の払戻しが認められています)。
- 法律上定められているわけではありませんが、多くの自治体では社員は原則として3名以上とされ、厚労省のモデル定款においても社員は3名以上とされています。
- 社員は必ずしも医師などである必要はなく、自然人であれば誰でも医療法人の社員となることが可能です。
イ 理事
- 理事長は、理事による互選によって選出され、医療法人の代表者として医療法人を代表することとなります。
- 理事長は医師などの資格を有するものでなければならないとされています。ただし、都道府県知事の認可を受けて医師資格を持たないものを理事長とすることも認められています。
- 複数の医療法人の理事長を兼務することは法律上禁止はされていませんが、監督官庁からは複数の医療法人を兼任している場合、これを解消するように指導されます。
ウ 理事長
- 理事長は、理事による互選によって選出され、医療法人の代表者として医療法人を代表することとなります。
- 理事長は医師などの資格を有するものでなければならないとされています。ただし、都道府県知事の認可を受けて医師資格を持たないものを理事長とすることも認められています。
- 複数の医療法人の理事長を兼務することは法律上禁止はされていませんが、監督官庁からは複数の医療法人を兼任している場合、これを解消するように指導されます。
エ 監事
監事は、医療法人の業務と財産の状況を監査するものとされ、株式会社における監査役に相当します。業務と財産の状況については、毎年、監査報告書を作成し、社員総会又は理事に提出することが求められます。
法律上、監事は原則として1名以上とされ、社員総会によって選任されることになります。
監事は医療法人の理事やその親族、従業員・取引先などの利害関係者から選任することはできません。また、監事は医師などである必要はありませんが、都道府県ごとに監事の適性について医療法人経営の経験などが要求されています。