医療法人における親族内承継と第三者承継

目次

医業継承

医業承継は親族である後継者に対して病院・クリニックなどを承継する「親族内承継」と親族ではない第三者に病院・クリニックを承継する「親族外承継」(第三者承継)に大別されます。

基本的に親族に適切な後継者がいる場合には「親族内承継」を選択することになると思いますが、医師は資格業であるところ適切な後継者が親族にいないケースも多く存在します。

親族ではない第三者への承継となると、そもそも承継先の第三者を見つけることを始めとして、適切な経済条件の交渉・設定、承継のための適切なスキームの選択や手続の実行が必要となるなど、専門家への相談が不可欠となります。

また、このような親族外承継には譲渡側、譲受側にそれぞれメリット、デメリットが存在するところ、このようなメリット、デメリットを理解して検討を進める必要があります。

メリットデメリット
譲渡側地域医療の存続(通院患者の利便性確保)・スタッフの雇用確保・退職金、承継対価の取得・借入金、個人保証からの解放診療理念、方針の維持が難しい・情報漏洩や風評被害のリスク・承継に向けた手続負担・承継による想定外の法的リスク負担(表明保証違反など)
譲受側新規開業コストの削減(開業手続の省略、雇用確保など)・不透明な開業リスクの排除(患者や認知度の引継ぎ)組織文化などの維持、統合・承継後の法的リスクの顕在化(資産の過大評価、簿外債務の発生)
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G&S法律事務所
野崎 智己(Nozaki Tomomi)

弁護士法人G&S法律事務所 パートナー弁護士。早稲田大学法務部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。第二東京弁護士会にて2014年弁護士登録。弁護士登録後、東京丸の内法律事務所での勤務を経て、2020年G&S法律事務所を設立。スタートアップ法務、医療法務を中心に不動産・建設・運送業などの企業法務を幅広く取り扱うとともに、離婚・労働・相続などの一般民事事件も担当。主な著書として、『一問一答 金融機関のための事業承継のための手引き』(経済法令研究会・2018年7月、共著) 、『不動産・建設取引の法律実務』(第一法規・2021年、共著)、「産業医の役割と損害賠償責任及びその対処」(産業医学レビューVol.32 No.1・令和元年、共著)、『弁護士のための医療法務入門』(第一法規・2020年、共著)等。