不倫・浮気の証拠と収集方法 

配偶者（夫・妻）や婚約者による不倫・浮気を疑っているけど、どのように調査して、どのような証拠を集めればいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。 

事実関係を確認した後には、配偶者や不貞相手に対して慰謝料を請求することになりますが、その際に有力な証拠を収集しておいた方が、慰謝料請求や離婚の交渉を有利に進めることが期待できます。 

本コラムでは、慰謝料請求をするために必要な証拠はどのようなものか、証拠収集の方法などについて、不倫・浮気による慰謝料請求について経験豊富な弁護士が、重要なポイントを解説します。 

１　不倫・浮気による慰謝料請求において立証が必要な事実 

（１）不貞行為の事実 

不倫・浮気に対する慰謝料を請求するためには、まず、配偶者と不倫相手が、肉体関係を持ったという事実が明らかになっていなければなりません。 

肉体関係を持っていたという証拠がないと、配偶者や不倫相手に白を切られた場合、慰謝料を請求していくことが困難になってしまいます。 

（２）既婚者と認識していた事実 

また、不倫・浮気相手に慰謝料を請求する場合、不倫相手があなたの配偶者を既婚者と知りながら肉体関係を持ったという事実も必要となります。本当に独身だと思って交際していた相手が実は既婚者だったからといって、慰謝料を支払わせることはできないというのが裁判例の立場です。 

既婚者だと知っていたかどうかは、なかなか直接的な証拠がないことも多いので、そのような場合は、元々の2人の関係性などから推定します。職場不倫などのように共通の知人が多い環境では、既婚者と知らなかったという弁解は通りにくいと考えられます。 

逆に、独身証明書がなければ登録できないはずの婚活サイトでマッチングしたようなケースでは、通常、既婚者と知らなかったとの弁解も合理性があると考えられるでしょう。 

既婚者と知っていたか聞かれた不倫相手のよくある説明として、知り合った当初は既婚者だったが離婚したと言われたというものがあります。しかし、その場合、本当に離婚したのかをよく確認しないで交際したこと自体が落ち度とされて、弁解が認められないことが多いです。 

また、不倫相手から、最初は既婚者だと知らなかったという説明がされることもあります。それが本当だとしても、知った後も肉体関係を持ち続けていれば、知った後の期間について不貞行為が成立します。 

２　不貞行為の証拠となり得るもの 

（１）写真（画像）、動画 

ア　性行為についての写真、動画 

性交渉ないし性交渉類似行為そのものを撮影することは通常不可能ですが、配偶者の携帯電話で撮影した配偶者本人や不貞相手の裸体や寝顔、性交渉中（ハメ撮り）画像・映像が携帯電話に保存されていることはありえます。 このような写真は、不倫・浮気の直接的で強力な証拠となります。 

また、自宅に不貞相手が、不貞相手宅に配偶者が出入りする場面や、ホテル等のプライベートの確保される施設に2人で出入りする場面を撮影した写真は、不倫・浮気を強く推認させる証拠となります。 このような写真の重要な点は、2人の顔が明確に撮影されていることと、入った時点と出た時点の2点の写真を揃えることです。それによって、性交渉をするのに十分な時間、2人で滞在したことがはじめて証明できるからです。 

イ　行動についての写真、動画 

その他にも、行動についての写真・動画が、性交渉をするのに十分な時間、2人で滞在したことの証拠にできる場合があります。 

例えば、宿泊を伴う旅行を2人でしている写真や、宿泊を要する遠方で2人で夕食を取っている写真と翌朝に朝食を取っている写真等が携帯電話に保存されていたような場合、同泊が強く疑われます。このとき、場所や時間帯を特定できるものが写っていることが重要です。 

ウ　予定と2人で会っている写真の組み合わせ 

また、食事の様子やプリクラなど、2人で会っている写真があったときに、配偶者があなたに対して虚偽の用件を告げていたような場合や、当日、配偶者が外泊したような場合は、それだけでは不倫・浮気の直接的な証拠ではありませんが、配偶者を問い詰めるのに大きな意味を持ちます。 

エ　証拠力の弱い写真、動画 

これに対して、2人で食事や買い物をしている写真や、多人数で終夜カラオケなどをしている写真・動画だけであったり、2人で出入りしても、それがネットカフェやスーパー銭湯のような2人きりのプライベートが十分に確保されない施設への出入りの写真の場合には、不倫・浮気の証拠としては弱いです。 

（２）録音 

配偶者や不貞相手を問い詰めて自白した場合、その内容を録音して証拠化しておくことは極めて重要です。 

このとき注意したいのは、事実と異なることを強制的に認めさせられたと言われたり、あるいは、スマホなどデジタル機器で撮った録音はカット＆ペーストが容易なため、内容が恣意的な切り貼りだとして否定されるおそれがあります。こちらの質問に対して「はい」「はい」と答えているだけのような録音の場合は、質問内容どおりの事実があったか疑問視されてしまうことがあるため、きちんと本人の口から具体的な事実を話してもらう必要があります。 

（３）カーナビ履歴・ドラレコ映像 

自動車内はプライベートな空間のため、不倫・浮気の証拠をよく消さずに残っていることが意外と多い空間です。 

カーナビで目的地に設定した場所は履歴に残っており、ラブホテルや風俗店などに行った履歴は、その日にその場所へ行ったことを強く推認させるとともに、復路の履歴で、いつ頃帰ったかまで分かることがあります。また、ドラレコ映像が残っていれば、ラブホテルや風俗店、自宅や不貞相手宅に行ったこと、及び、その時刻、車内での会話などがすべて分かることがあります。 

また、記録自体が残っていなくても、特定の時点で映像が削除されているといった不自然な点があれば、配偶者と不貞相手が会う日時、場所を絞り込むための一助になります。 

（４）メール・ショートメール、LINEメッセージ 

メール・ショートメールやLINEのメッセージは、配偶者と不貞相手のやり取り内容、待ち合わせ予定、場合によっては性交渉があったことを示唆する内容などが記載されていることがあります。

 このとき、デジタルテキストは編集が容易なため、テキスト形式で保存するのではなく、スクリーンショット、写真撮影、印刷など、編集の難しい方法で、誰と誰の会話か分かるように保存しましょう。 また、LINEのように直近のメッセージは「昨日」「今日」などと表示され、後で日付が分からなくなりやすいものもあります。確保日付を別に記録しておいて、分からなくならないようにしましょう。 

（５）SNS（Facebook、X(Twitter)、Instagram）、ブログ 

あなたの知っているアカウントとは別のアカウントで、配偶者がSNS（Facebook、X(Twitter)、Instagram）アカウントや、ブログなどで活動している場合があります。そうしたWebサービス上で、不貞相手とのツーショット写真をアップしていたり、互いの投稿がタグ付けされていたり、同じ日に同じ場所に行っていることが分かれば、不倫・浮気を疑う証拠になり得ます。 

（６）クレジットカードの利用明細・領収書、会員証 

2人で宿泊したことを示すホテル、旅館等の領収証、クレジットカードの利用明細書は、配偶者が自分以外の人間と特定の日に宿泊したことを示す証拠となります。ラブホテルの会員証なども、ラブホテルを使用した証拠となります。 

ただし、それだけでは誰と宿泊したのかの証拠にはならないため、他の証拠と組み合わせる必要があります。 

（７）手帳・スケジュール帳 

手帳・スケジュール帳・予定表・日記などには、配偶者と不貞相手がいつどこで会うのか・会ったのかが記載されていることがあり、重要な情報となります。 

ただし、記載が淡泊で、密会に関する予定ばかりが書かれているような手帳の場合、他の証拠と矛盾がなくても、偽造を疑われて信用性が低く評価されることがあります。 

（８）妊娠・堕胎の事実を証する文書 

配偶者との間でまったく性交渉がなかったにもかかわらず配偶者が妊娠・堕胎した場合、不貞行為を強く疑わせます。 

かかった産婦人科が判明した場合、裁判所に証拠保全や調査嘱託を申し立てて、医師の診断書、手術同意書等を取得することが考えられます。女性が堕胎手術をする場合、医療機関は手術同意書に男性の署名を求めるため、不貞相手が署名していることがあります。 

（９）GPS 

市販のGPS追跡機器、タグ、GPSロガーは、非常に正確に行動経路をトレースすることができます。 
ただし、配偶者の所持品や自動車などにこっそりとGPSを付けるのは、プライバシー権侵害とされて、逆に違法行為とされるおそれがあります。 

また、iPhone等、一部のスマホは、リアルタイムで位置情報を発信しているタグが一緒に移動していることを検出する機能を持っており、GPSタグを付けたことが発覚するリスクもあるため、使用には慎重な判断が必要です。 

（10）違法行為にならないための注意点 

不正にスマホのパスワードを解除したり、自分のいないプライベート空間に隠しカメラや録音機器を設置したりといった行為は、配偶者や第三者のプライバシー権を侵害するとして、逆に違法行為とされてしまうおそれがあります。 

無関係な人間が行ったら違法になる行為を隠れてやることは、自宅内でも控えた方がいいでしょう。 

３　不貞行為の証拠を集める方法 

（１）自分で確認する 

まずは、自分で配偶者・婚約者のプライベートを探り、直接的な証拠でなくても、可能な範囲で情報収集を行い、配偶者・婚約者の行動パターンや不自然な点を把握することが、証拠集めの第一歩です。 

自分でできる証拠集めには限界がありますが、一方で、配偶者のプライベートな情報に最も近づけるのもまた、同居している自分自身です。 後で探偵に調査を依頼する場合でも、まずは自分でできる限りの情報を集めて、的確な調査を依頼することが、調査の成功につながります。 

例えば、携帯電話の履歴は、画面を撮影することで証拠化できます。不自然な外出のときは、用件を聞いておいて後で裏付けを取ることが考えられます。配偶者が捨てた領収書からは、日時と店の場所と買った物が分かるため、行動を推測する手がかりとなります。 

不倫を疑っていると配偶者に察知されると証拠を隠されるおそれがあるので、なるべく疑われないようにしましょう。 

ただし、疑っているのがバレてしまったときに、無理にしらを切る必要はありません。むしろ、バレてしまったときには、疑っていることを堂々と伝えて問い詰め、可能であれば不倫を認めさせることを目指した方がいいでしょう。 

配偶者が不倫を認めたときは、その場で、不倫を認める謝罪文や誓約書などを書かせることで、強力な証拠となり得ます。 

（２）探偵事務所や興信所（調査会社）に依頼する 

配偶者の行動パターンなどのプライベートに関する情報や、不倫・浮気を疑わせる不自然な点を示唆する情報が集まったものの、直接的な証拠・決定的な証拠がない場合は、探偵事務所や興信所、探偵社等の調査会社に調査を依頼することが考えられます。 

調査会社や興信所、探偵社等は、提供された情報をもとにして配偶者と不貞相手の行動を予想し、尾行や張り込みを行って、密会の現場を押さえ、写真や動画を撮影して、証拠化します。 

配偶者と不貞相手の行動を予想するに当たって重要なのが、あなたが提供した情報です。配偶者と不貞相手の行動をどれくらい正確に予想できるかによって、探偵費用が大きく変わってきます。 なぜなら、尾行や張り込みなどの時間が増えるほど探偵費用がかさむので、行動が予想できず、何日間も長時間見張ったり尾行したりする必要がある場合は費用が高額になります。これに対して、ピンポイントの時間・場所で密会の可能性が高いと分かれば、その日その時間帯だけ張り込みを行うことで密会の現場を押さえることができ、費用を抑えることができます。 

配偶者と不貞相手が、ラブホテルや自宅等、肉体関係を持つのに適した施設へ出入りして、長時間滞在した後、また出てくるところの画像・動画の撮影に成功すれば、両者が性行為をしている可能性が高いことを示した証拠となります。 

調査会社への依頼費用は、調査に成功して、裁判で慰謝料を請求する場合、費用の一部（慰謝料の10％程度）を上乗せして払うように請求することができます。 

（３）弁護士に相談する 

ア　相談 

不貞行為の証拠がある程度集まったときや、配偶者が不倫・浮気を自白して証拠化できたときは、弁護士に相談しましょう。 

弁護士は、それまでに集めた資料で不倫の証拠として十分か、どういった証拠を追加で集める必要があるかなどをアドバイスして、慰謝料を取るまでの流れや、現在の状況を整理して、依頼を受けて、詰めの正確な証拠を確保します。 

イ　弁護士会照会 

密会現場の写真や、携帯電話番号などの証拠が集まったものの、不貞相手の素性が不明な場合、弁護士に依頼すると、不貞相手の電話番号から持ち主を調べて、不貞相手の素性を特定することができます。 

弁護士は、弁護士会を通じて、役所や企業、各種団体に対して照会を行うことができます。 例えば、携帯電話会社に照会して、携帯電話番号から、契約者の氏名住所などを調査することができます。 

ウ　文書送付嘱託・調査嘱託 

裁判所を通じて、役所や企業、各種団体に対して照会を行うことができます。弁護士会からの照会と比べて、裁判所を通じての照会のため、回答範囲が広いのが特徴です。 

ホテルが判明しているが、不貞相手が宿泊者であることを否定しているような場合、ホテルに宿泊客の名簿を求めることなどが考えられます。もっとも、予約を取った人間以外の書いた名前は偽名でないかどうか確認されないため、正しい名前が書かれていない可能性があります。 

また、医療機関に対して妊娠の証明書、堕胎同意書などを求めることも考えられますが、医療機関は守秘義務があるため、必ずしも開示されるとは限りません。 

エ　裁判記録の閲覧・謄写 

不貞相手が他にも不貞行為を行って裁判沙汰になった過去があることが分かっていれば、当事者の名前が分かると、裁判記録が見つかることがあります。 

過去の裁判記録は原則として公開されているため、利害関係を裁判所に示して、閲覧することで、不貞相手の過去の行動を知って、今回の行動を推測するのに役立てることができます。 

４　まとめ 

不倫した配偶者や不倫相手から慰謝料を請求するために必要な証拠と、証拠を集める方法について解説いたしました。 以上のとおり、不貞行為の証拠には様々なものが考えられますが、たとえ不貞行為を証明するためであっても、行き過ぎた調査は違法とされるおそれもあるため、慎重な検討が必要であり、証拠収集の段階から弁護士の判断を仰ぐことが望ましいです。 

G&Sでは、証拠の収集状況を踏まえて、経験豊富な弁護士が個別具体的な事情に応じた最適な方法を考えて慰謝料請求を行います。不倫・浮気の慰謝料請求については、G&Sまでお気軽にご相談ください。