不倫・浮気による慰謝料請求の流れ|事実確認・証拠収集、請求相手の特定、請求方法など
配偶者(夫・妻)や婚約者による不倫・浮気が発覚した場合、配偶者や不貞相手に対して慰謝料を請求したいと考えることがあると思います。
また、配偶者の不倫を疑っているけど、どのように調査して証拠を集めればいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
不倫・浮気が発覚した場合又は疑われる場合、慰謝料を請求する側も慰謝料を請求される側も、どのような準備をして、誰を相手に、どのように請求をすればいいのか、悩まれる方が多くいらっしゃいます。
本コラムでは、慰謝料請求の流れ、請求方法などについて、不倫・浮気による慰謝料請求に関して経験豊富な弁護士が、重要なポイントを解説します。
目次
1 事実関係の確認・証拠の収集
(1)どのような行為が慰謝料請求の対象になるのか
不倫とは、既婚者又は婚約しているにもかかわらず、配偶者・婚約者と別の異性と肉体関係(性交渉や、手淫、口淫等の性交類似行為)を持つことをいいます。法的には不貞行為ということが一般的です。
不倫は、配偶者・婚約者の心を傷つける重大な違法行為です。不倫は、法律上、民法709条に定められた不法行為に当たります。そのため、不倫をされた配偶者は、不倫をされたことによる精神的な苦痛に対する賠償(不法行為に基づく損害賠償)を請求することができます。これが不貞慰謝料といわれるものです。
また、不貞行為は、民法770条1項に定められた離婚原因の一つであり、不倫をされた方には、裁判で一方的・強制的に離婚を求めることができる権利があります。
離婚をしなくても不倫を理由として慰謝料は請求することができます。ただし、不倫が原因で離婚した場合と比べると、離婚した分の精神的苦痛の慰謝料(離婚慰謝料)を請求できない分だけ、慰謝料金額は低額になることが多いです。
(2)不貞行為の証拠を収集する方法
ア 自分で確認する
不倫・浮気による慰謝料を請求するためには、不貞行為の証拠が必要となります。
もし慰謝料を確実に払わせたいのであれば、警戒されずに調査するため、疑いを抱いていると気づかれないように、細心の注意を払って行動することが望ましいです。
その際、配偶者のプライベートな情報に最も近づけるのは、他ならぬ自分自身です。
まずは自分で情報を集めてみましょう。探偵などに調査を依頼する場合でも、まずは自分で可能な限りの情報を集めて、的確な調査を依頼することが、調査の成功につながります。
イ 探偵事務所や興信所(調査会社)に相談する
不貞行為が疑われる情報がある程度集まったものの、決定的な証拠がない場合は、探偵社等の調査会社に相談し、調査を依頼することを検討しましょう。
調査会社は、あなたが提供した情報をもとに配偶者と不貞相手の行動を予想し、尾行や張り込みを行って、密会の証拠をつかみます。
配偶者と不貞相手がラブホテル等へ出入りする画像・動画の撮影に成功すれば、両者が性行為をしている可能性が高い証拠となります。
調査会社への依頼費用は、調査に成功して、裁判で慰謝料を請求する場合、費用の一部(慰謝料の10%程度)を上乗せして払うように請求することができます。
ウ 弁護士に相談する
配偶者・婚約者・不貞相手に対して慰謝料を請求したいとき、請求できるか悩んだときは、弁護士に相談しましょう。
交渉を依頼すれば、弁護士が相手とのやり取りを代理してくれます。
(3)不貞行為の証拠となり得るもの
ア メール・ショートメール、LINEメッセージ
不貞行為があるかどうかの直接的な証拠にはなりにくいですが、配偶者と不倫相手のやりとりは、スマートフォンのメール・ショートメール、LINE等のSNSのメッセージで行われていることが多いです。特定の親しい異性がいるかどうか、疑わしいやり取りをしていないかは、次の段階に進むかどうかを判断するために重要な情報源です。
不貞行為の感想、待ち合わせの日時、場所等が記載されているやり取りが注目ポイントです。
やりとりを調査会社に提出すれば、不貞相手と会う日時、場所を絞り込めるため、ピンポイントの的確な張り込みが可能となります。
イ カーナビ履歴・ドラレコ映像
自動車のカーナビに、ラブホテルや風俗店などに行った履歴が残っていることがあります。また、ドラレコ映像などで、ラブホテルや風俗店、不倫相手の自宅に行ったことが分かったり、特定の時点で映像が削除されているといった不自然な点に気づくかもしれません。
こうした情報は、後で配偶者を問い詰める手がかりになるほか、不貞相手と会う日時、場所を絞り込むヒントになります。
ウ クレジットカードの明細、会員証
クレジットカードの明細で、支払をした店舗が分かります。普段の生活圏や行動パターンと異なる買い物に注目しましょう。不貞相手と会う日時、場所を絞り込むヒントになります。
また、ラブホテルの会員証は、一見してそれと分からないデザインのため、油断して財布に入っていることも多いです。見てもどの店の会員証か書かれていないような会員証があったら、裏面の情報を見て、インターネットで検索してみることが考えられます。
エ 画像、動画
不貞相手との写真や、性行為の画像や動画などは、非常に有力な証拠となります。入手できる可能性は低いですが、それだけに入手できた場合は、不貞行為をかなり明確に示すことができます。
ただし、不貞相手と知り合いでなければ、どこの誰なのかを、別の情報で特定する必要があります。
注意 GPSログ
現代では、コンパクトなGPSロガーで、リアルタイム位置情報を記録、追跡することができる時代です。行動経路は、不貞行為の解明にとって重要なポイントです。
しかし、配偶者の自動車などにこっそりとGPSロガーを付けるのは、限度を超えるプライバシーの侵害とされて、逆に違法行為とされるおそれがあります。
また、一部のスマートフォンはリアルタイム位置情報を発信している機器が一緒に移動していることを検出する機能を持ったものがあり、GPSロガーを付けたことが発覚して、警察に相談されたり、自分がつけたことが露見するリスクもあります。
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2 慰謝料を請求する相手の特定
(1)請求できる相手
配偶者や婚約者による不倫・浮気が発覚した場合、配偶者・婚約者及び不貞相手に対して、慰謝料を請求することができます。
配偶者とその不貞相手の両方に請求できますし、片方にだけ請求することもできます。
ただし、配偶者と不貞相手のどちらかから慰謝料を受け取ると、受け取った額の範囲で両方から支払を受けたことになり、二重取りはできません。たとえば、慰謝料が総額200万円のケースで、配偶者が慰謝料として150万円を支払った場合、不貞相手は「200万円のうち150万円はもう支払われたので、自分は50万円しか支払わなくていい」と主張することができます。
もっとも、配偶者と不貞相手がそれぞれ200万円ずつ支払ってきたときは受け取ってよく、後で二重取りを理由に返金する必要はありません。
(2)不貞相手の特定
不貞相手がどこの誰なのか、最初は分からないケースも多いです。
事前の調査で明らかにならなかった場合は、弁護士に依頼すると、不貞相手を特定できることがあります。
弁護士は、不貞慰謝料請求の依頼を受けて、不貞相手の電話番号や、LINEのID、自動車のナンバー等から、その携帯電話や自動車の持ち主の情報を開示するように、携帯会社や運輸局に照会することができます。
開示された持ち主の情報をもとに、弁護士は、不貞相手に対して慰謝料請求を行います。
関連記事:不倫相手の素性・居場所を調べる方法
3 慰謝料請求の示談交渉
(1)話合い・協議
不倫・浮気による慰謝料請求は、一般にはまず配偶者や不貞相手に対して慰謝料を支払うよう連絡することから始まります。
その際の連絡の方法は、直接顔を合わせての話し合いでも、電話でも、LINEなどのメッセージでも問題ありませんが、本気度を示すためにも内容証明郵便を送ることが有効です。
ただし、書面は形として残るので、記載内容には注意が必要となります。
弁護士に代理交渉を委任すれば、書面の記載内容の検討から内容証明郵便の発送まで、訴訟を見据えた対応を依頼することができます。
(2)示談書
示談交渉をした結果、当事者間で合意に達したときは、双方で示談の条件を確認したうえで、示談書・合意書・覚書などの合意を証明する書面(題名によって効力に差異はありません)、夫婦で離婚する場合は離婚協議書といった書面にまとめます。
不倫・浮気の事実、慰謝料の支払い、不倫関係解消の誓約などを示談書に整理して確認して、示談する双方で示談書に署名と押印をすることで示談書を完成させます。
示談書を作成しない場合、後になって合意内容に疑義が生じたときに、示談の成立と内容を確認できる書面が残っておらず、対応に困るおそれがあります。
また、重要なことが書かれていなかったり、意図したとおりの内容の示談書になっていないことが後で判明した場合も、対応に困ることになります。
そのため、示談書の作成は、弁護士に依頼することをお勧めします。
関連記事:不倫・浮気による示談交渉のポイント
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4 慰謝料請求の訴訟
(1)裁判にすべきケースと裁判をするべきでないケース
不貞(不倫、浮気)の慰謝料請求をする事案では、裁判にすべきケースと裁判をするべきでないケースがあります。
裁判にすべきケースとしては、相手がこちらの請求を無視しているケースや、相手が不倫を否定していて話し合いにならないケース、相手の提示額が相場より低く、裁判をした方がより多くの慰謝料が獲得できる見込みのケースが考えられます。
これに対して、裁判をすべきでないケースとしては、不貞行為の十分な証拠がないケースや、相手がこちらのことを既婚者と知らなかったケース、判決が出ても相手に収入や貯金がなく、現実にお金を払わせることができないケースがあります。
(2)調停
調停とは、裁判所の手続のひとつですが、裁判のように判決で白黒をはっきりさせることを求めるものではなく、調停委員という有識者を介した話合いにより合意することを目指す手続です。
夫婦(元夫婦)間の慰謝料請求調停は、離婚調停と同じく、家庭裁判所で行われます。不倫相手に対する慰謝料請求調停は、民事調停となり、簡易裁判所で行われます。
調停を申し立てると、裁判所が期日を決めて双方を裁判所に呼び出し、それぞれが調停委員に事情を話して、合意を目指して話し合いを行います。双方が直接顔を合わせる必要がなく、調停委員が中立の立場で話を聞いてくれます。
合意を目指す話し合いのため、証拠が不十分でもある程度事情を汲んで説得がされる一方で、どちらかが受け入れられない内容を調停委員が強制することはできません。また、調停は、平日に1回半日ほど時間がかかり、裁判所に行く手間もかかります。そのため、慰謝料請求調停を選択することはほとんどありません。
話し合いがまとまれば、裁判官が合意内容を確認して、調停調書という書類にまとめます。調停調書に記載された合意内容どおり慰謝料が支払われなかった場合、強制執行をすることができます。
家庭裁判所の慰謝料請求調停を選択すべきケースとしては、元夫婦間で慰謝料の話し合いがまとまったものの、長期の分割払いになるなど支払に不安があり、公正証書のように強制執行のできる効力のある合意書を交わしたいときなどがあります。
(3)裁判(提訴から判決まで)
話し合いや調停などでは慰謝料支払が見込めない場合、裁判で慰謝料を請求します。
ア 提訴
裁判では、まず、訴状を作成して、裁判所に2部提出します。
この時点で裁判所に納める費用は印紙代と郵便切手代です。
イ 送達
提出した訴状と証拠は裁判所から相手(被告)に送られます。これを送達といいます。被告は、送達を受けて、これに対する反論の有無、内容を、答弁書として裁判所と、訴訟を提起した原告に送るように指示されます。
原告が出した訴状に対して、被告に反論する機会が与えられるため、訴状にどのような事実関係を書くか、最初にどのような証拠を提出するかについては、裁判の最後までの流れを予測し、戦略的に考える必要があります。
ウ 第1回期日
通常、訴状が裁判所に受理されてから1か月程度の日に、裁判の第1回期日が開かれます。ここで、裁判所から双方に不明点などの質問があり、被告が出廷している場合には争点の確認や今後の進め方について協議します。また、お互いが訴状、答弁書で主張したことについて、追加の主張や反論、証拠の提出を行うように指示があります。
訴状がきちんと届いているにもかかわらず、第1回期日までに被告が答弁書を提出せず、裁判所に連絡もしない場合は、被告の反論がないものとして訴訟が終結し、判決が下されます(裁判所の判断で被告をもう一度呼び出すこともあります)。
エ 第2回期日以降
その後、裁判期日が約1か月に1回のペースで開かれます。双方の主張と証拠が出尽くすまで、原告、被告が交互に主張書面と証拠を提出していきます。
(4)裁判上の和解
双方の主張、証拠が出尽くすと、裁判所から見た暫定的な勝訴、敗訴、慰謝料の金額についての見通しが立ちます。この裁判官の判決の見通しを「心証」といいます。そして、原告と被告のいずれもが条件次第では和解もありうると考えているときは、裁判所を仲裁者として和解協議が行われます。
その結果、慰謝料の金額や付随する和解条件について合意ができたら、和解が成立し、裁判は終結します。
合意できない場合は、必要に応じて証人尋問が行われ、判決が下されます。
関連記事:不倫裁判の流れ(訴訟提起から判決まで)
5 まとめ
以上のとおり、慰謝料請求をどのような流れで行うかは、戦略的に考える必要があり、個別具体的な事例に応じて、弁護士の判断を仰ぐことが望ましいです。
G&Sでは、示談交渉から裁判までの流れを踏まえて、経験豊富な弁護士が個別具体的な事情に応じた最適な方法を考えて慰謝料請求を行います。不倫・浮気の慰謝料請求については、G&Sまでお気軽にご相談ください。