不倫慰謝料の示談交渉のポイント
不倫・浮気をされた場合、慰謝料は払ってほしいが、不倫・不倫をした配偶者(妻・夫)とはさっさと縁を切りたい、あるいは、表沙汰になることは望まないので、示談で解決したいという方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、不倫慰謝料の示談交渉のポイントについて、不倫・浮気による慰謝料請求について経験豊富な弁護士が、重要なポイントを解説します。
目次
1 不倫・浮気による慰謝料請求の方法
不倫・浮気による慰謝料請求については、まず配偶者・不倫相手に対して不貞・浮気の事実を指摘する連絡を行った上での示談交渉から始まることが一般的です。
(1)示談交渉の必要性
ア 示談とは
示談とは、当事者双方の法的問題について、話し合いの結果として解決することを当事者間で合意することをいいます。法律問題について、関係者の間で話し合い、解決するための条件が調うと示談を成立させて、争いを終結させます。その際には、争いが再燃することを防ぎ、示談内容を明確化するため、示談書を作成することが一般的です。
イ 示談をするメリット
慰謝料について示談をする一番のメリットは、比較的早期に円満に問題解決ができる点です。
調停や裁判をする場合、数か月、場合によっては年単位の時間を要します。調停や裁判は1か月に1回未満の頻度でしか進行しないためです。
これに対して、示談の場合、お互いに合意さえすれば解決します。
また、配偶者が不倫の噂が周囲に広まることを避けたいと考えていて、あなたとしても高額な慰謝料を払ってもらわないと納得ができないと考えている場合には、示談が重要です。
調停や裁判では、一般的な慰謝料の相場を踏まえてやり取りが進みます。不倫の慰謝料の相場は、不倫によって離婚に至った場合でも100~300万円ほどで、離婚しない場合は100万円以下になるケースもあります。
示談では交渉を続けることで相手が納得すれば高額な慰謝料を受け取ることも可能なので、慰謝料の額を気にしている人にとっても示談は有効な手段といえます。
(2)示談交渉の方法
ア 配偶者や不倫相手への連絡
慰謝料の請求は、まず配偶者や不倫相手に対して不倫・浮気の事実を指摘する連絡を行い、話し合いの場を持つが一般的な手順です。
イ 相手方との交渉
話しあい、交渉の方法としては、当事者間で直接話し合う方法、電話をする方法、文書を送る方法、弁護士に依頼して弁護士から請求してもらう方法などがあります。
言い逃れを考える暇を与えずに問い詰める意味では直接会って話し合う方法が最も有効ですが、直接の話し合いは抵抗や心配がある場合は、電話や文書、メールやLINEなどが考えられます。
文書、メールやLINEなどであれば、相手の返答が文章で残りますので、後で言った言わないの争いになることを避けやすくなります。
ウ 示談書の作成
話し合いで合意が得られたら、その内容を書面に残し、お互いがサイン又は押印することが重要です。
この書面は、示談書、合意書、和解契約書などと呼ばれます。いずれも法律的な意味は同じです。
示談書は、その内容で最終的に合意したことを示す重要な書類のため、作成には細心の注意が必要です。関連記事もご参照ください。
関連記事:不倫・浮気の示談書作成上の留意点
2 不倫・浮気による慰謝料を請求する際のポイント
不倫の慰謝料請求を文書で行う場合、内容証明郵便という郵便を利用することが多いです。
(1)内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、誰が、誰に対して、いつ、どのような内容の文書を送ったのかを、郵便局が証明してくれるサービスです。
郵便を送ったことや届いたことが証明される郵便(配達証明)は他に特定記録や簡易書留、レターパックなどがありますが、そのどれも、送った文章の内容までは証明されません。
内容証明郵便については配達証明に加えて、相手に送付した書面の控えが5年間、郵便局に保存されるため、言った言わないという事態を避ける最も効果的な手段となります。
なお、郵便局が証明してくれるのは「誰がどのような内容の文書を送ったか」であり、その文書に書かれている内容が正しいことまで証明してくれるものではありません。まれにこのような誤解をされている方がいますが、郵便局はそのようなサービスは提供していません。
(2)内容証明郵便のメリット
内容証明郵便を使うことで、郵便局が、「書面の送付し、相手がこれを受領したことの証明(配達証明)及び「どのような内容かの証明」(内容証明)をしてくれますので、それが制度上のメリットということになります。
また、不倫の慰謝料請求権は、不倫の事実と不倫相手を知ってから3年で消滅時効が完成してしまいますが、内容証明郵便を送ることにより時効の完成が6か月間猶予されます。
そのため、時効消滅が近く、裁判等を起こす時間的余裕がない場合には、まずは内容証明を送って時効の完成を阻止することが考えられます。
もっとも、多くのケースではこれらの制度的なメリットよりも、内容証明の心理的な効果を期待して内容証明を利用しているケースが多いと思われます。
つまり、不倫相手に、正式な法的請求を受けたという自覚を持たせ、事実上の圧力をかけて、誠実に交渉のテーブルにつかせる効果です。
(3)内容証明郵便で送る書面に記載すべきこと
ア 不倫(不貞行為)の事実
まず、大前提として不倫(不貞行為)の事実を指摘します。不倫に限らず、法的な請求では、まずその原因となっている事実関係を正確に指摘することが大切です。
不倫の事実を指摘する際、いつからいつまで不倫をしていたのかが明確にわかっているときは、「貴殿は、○○との間で、○○年○○月から○○年○○月までの期間、不貞行為に及びました。」等と記載します。ただし、正確に分からない場合、誤った指摘を行うことで根拠に乏しいのに請求をしてきていると思われてしまうこともあるので時期までは触れない方がいいでしょう。
イ 夫婦関係への影響
次に、不倫の結果、婚姻関係(夫婦関係)にどのような影響があったのかについて記載します。別居や離婚をした場合はその旨を書き、離婚に向けた話し合いをしているのであれば、離婚協議中であると書いて、不貞行為によって婚姻関係が破綻したことを指摘します。
不倫の夫婦関係への影響は、慰謝料額の重要な要素のため、影響があった場合は必ず記載しましょう。
ウ 精神的苦痛を被ったこと
また、不倫とそれによる夫婦関係への影響の結果、あなたがどれほど重大な精神的苦痛を受けているのかを指摘します。もし、不倫が原因で不眠症やうつ症状などを発症し、心療内科や精神科に通っている事実があれば、それにも触れましょう。
エ 慰謝料を請求すること
以上を踏まえ、精神的苦痛に対する慰謝料として、○○円を請求すると明記します。
これは不平不満や愚痴ではなく、慰謝料請求を行う文書なのだということを明確にすることが重要です。
また、交渉上の理由から相場より高い金額の慰謝料を請求することも考えられますが、一般的な慰謝料の相場から著しく高額な金額を請求すると相手の態度が硬直的になる場合や調停・裁判に発展した場合に裁判所の心証を損ねる可能性もありますので、注意が必要です。
関連記事:不倫・浮気の慰謝料の相場
オ 慰謝料の支払期限及び支払方法
上記のように請求した慰謝料を、何月何日までに、以下に記載の振込先口座に対して振り込む方法で支払いなさいと記載します。期限を切ることで、期限までに支払がなかった場合に次の措置に移行する目処をつけることができます。
カ 法的措置をとる可能性
最後に、期限までに振込がなかった場合や連絡がない場合には、やむを得ず法的措置を講じる場合があると書きます。これにより裁判などの法的手続に進むことを避けたい相手方に心理的な圧力をかけることで、任意での慰謝料の支払いを促すことに繋がります。
(4)内容証明郵便の送付先
内容証明の送付先は、不倫相手の住所です。不倫という周囲の社会的評価を下げる事実が書かれた書面を、いたずらに他人の目に触れる可能性のある職場や実家などに送ってしまうと、逆に相手方からあなたが名誉棄損等として法的責任を問われる事態に発展してしまうおそれがありますので注意が必要です。たとえ「親展」等の文言を封筒に書いたとしても、職場などに通知書を送るのは避けた方が良いでしょう。
やむを得ず職場などに通知書を送ることが許される場合として、不倫相手の住所や連絡先が不明であり、手を尽くしても氏名と勤務先しか判明していないといった場合が挙げられます。このような場合は、不倫の事実が記載された通知書を職場などに送ることが認められる可能性があります。
(5)高額の慰謝料を得るポイント
ア 事前の証拠収集
慰謝料請求を成功させる最も基本にして重要なポイントは、事前に十分な情報・証拠を押さえておくことです。
配偶者(夫・妻)から不倫の期間や頻度、行った場所やしたことなどを詳しく聞いておいたり、証拠をもとに具体的な事実関係に書面中で触れることで、相手に言い逃れを断念させ、慰謝料支払の方向に持っていくことが大切です。
イ 強い姿勢を示す
また、内容証明郵便で、不倫関係を否定した場合には和解は不可能のため、法的措置(裁判)に移行すると書くことが考えられます。
内容証明郵便を使うことの心理的効果と合わせて、相手を示談交渉のテーブルにつかせる効果が期待できます。
ウ 交渉を長引かせないこと
交渉を長引かせると、相手も心に余裕が出て来るほか、調べたり弁護士に相談したりして知恵をつけてしまうので、交渉を長引かせずに速やかに示談に応じるように求めることが大切です。
それに関連して、証拠などでハッキリせず、反論の余地がありそうな事実については内容証明の段階では敢えて書かない方が、交渉が脇道に逸れる心配がありません。
エ 弁護士への依頼
内容証明郵便は、書いた内容が5年間残りますので、不用意なことを書くとかえって自分に不利になってしまうおそれもあります。
また、内容証明を自分で出す場合には、自分の住所を記載する必要があり、相手に自分の住所が知られてしまいます。
間違いのない内容を一方的に送るために、内容証明郵便での請求の段階から、弁護士に依頼することを検討すべきでしょう。
弁護士に依頼すれば、その後の相手方との交渉や、示談書の作成、取り交わしなどまでを全て任せることができます。
3 まとめ
ここまで、不倫慰謝料の示談交渉のポイントについて解説いたしました。以上のとおり、内容証明郵便はメリットもある一方でリスクもあるため、送る前に慎重な検討が必要であり、内容証明郵便を送る段階から弁護士の判断を仰ぐことが望ましいです。
G&Sでは、今までの経験や、各ケースで入手した証拠を踏まえて、経験豊富な弁護士が個別具体的な事情に応じた最適な方法を考えて慰謝料請求を行います。不倫・浮気の慰謝料請求については、G&Sまでお気軽にご相談ください。