面会交流とは|ルール・決め方・注意点を弁護士が解説 

子どもがいる夫婦の場合は、離婚する際や別居中に、子どもを監護養育していない親(子どもと離れて暮らしている親)とその子どもが直接面会したり、面会以外の方法で交流することについて、取り決めることが重要になります。 

もっとも、面会交流は、強制執行が困難であり、途中で面会が難しくなるなどトラブルになることが少なくありません。 

本コラムでは、面会交流について、そのルール・決め方・注意点などを、離婚・男女問題に関して経験豊富な弁護士が、重要なポイントを解説します。 

目次

1 面会交流とは 

(1)面会交流権とは 

面会交流 離婚後、親権者または監護者にならなかった方が、子どもに面会したり一緒に時間を過ごしたり、文通することを面会交流と言い、その権利を面会交流権といいます。

(2)面会交流は義務なのか 

法律は、面会交流について、原則として離婚するときに協議で定め、協議が難しいときは家庭裁判所が決定すると定めています(民法766条)。 

条文では、面会交流は非監護親の権利あるいは監護親の義務とは記載されておらず、子の福祉(子どものため)を考えて決めるようにと規定されています。 

(3)問題になるタイミング 

離婚に向けた別居中・離婚後、まずは父母が話し合って決めることになりますが、話合いがまとまらない場合や話合いができない場合には、調停などを申し立てて決めることになります。 

(4)面会交流は何歳まで求められるのか 

面会交流に法律上の年齢制限はありませんが、裁判所では、概ね、離婚親権者について意見陳述の機会を与えられる年齢である15歳を境目として、面会交流の規定を求める傾向にあります。父母の離婚時に、子どもがこれよりも年上の場合は、基本的に、自己の自由意思で実親と面会するかを判断できるとされています。 

2 面会交流が認められないケース 

子供と離れて暮らす親が面会交流を求めてきても、面会交流が子の福祉を害する特段の事情がある場合には、面会交流を拒否することができます。面会交流が子の福祉を害する特段の事情があるかは、以下の類型及び親権者の様子を見て判断されます。 

(1)子どもに危険性が及ぶ場合 

ア 非監護親による子どもの連れ去りのおそれ 

面会交流中に子どもを連れ去った場合、連れ去りをした非監護者の行為は、刑法第224条の未成年者略取罪に該当する可能性があります。非監護になった後に実力で子どもを奪取すると、未成年者略取になります(家からの連れ去りについて最決平成15年3月18日、公道上での連れ去りについて最判平成17年12月6日)。  

ただし、これに対して、子が親の働きかけに応じて動いた場合等は「社会通念上相当」で違法性阻却される場合があります。 

イ 非監護親による子どもの虐待のおそれ 

過去に子どもに対するDVの事実があるなど、子どもの虐待のおそれがある場合、面会交流が認められない場合や、第三者を介在させた形での面会交流を認められる場合があります。 

ウ 非監護親から監護親に対する暴力のおそれ 

過去に配偶者に対するDVの事実があるような場合には、面会交流を全面的に禁止するのではなく、直接交流による監護親の負担及びそれによる子どもに対する悪影響を考慮して、手紙での意思疎通と、子どもの近況写真の送付という限定的な交流を認めた事例があります(東京高裁平成27年6月12日決定)。 

(2)子どもによる拒絶 

子どもは面会交流の当事者であり、面会交流は子どものためにすることですから、子どもが真意で面会交流を拒絶している場合は、面会交流は認められません。 

ただし、子どもの意向を聞く際には、特に子どもの年齢を踏まえ、その意向を示す背景あるいは真意について慎重に検討すべきとされています。 

幼児~小学校低学年までの年齢の子どもは、適切な判断能力を欠いていたり、監護親からの影響を強く受けて面会交流を拒否している可能性等を検討して子の真意の把握に努めるべきとされています。 

裁判例上、子どもが表面上拒絶していても、子どもの福祉・利益の観点から面会交流が認められた事例があります(大阪家裁昭和49年2月20日審判、東京家裁昭和62年3月31日審判)。 

他方、裁判所での試行的面会交流において、幼児期の子どもが非監護親と対面するや泣き出し、同室にいる限り泣き止まなかった場合に、面会交流が認められなかった例があります(青森家裁昭和61年12月13日審判)。 

これに対して、だいたい10歳以上の子どもについては、原則として子どもの意向が尊重されます。法律上、15歳以上の子については、面会交流に対する意思の聴取が審判手続上の義務とされています(家事事件手続法152条2項)。 

(3)子どもに悪影響がある場合 

面会交流の当事者となる非監護親の言動により子の健全な発育を阻害するおそれの認められるようなケースでは、面会交流が制限されることがあります。 

例えば、過去の言動などから、子の連れ去りのおそれのある場合などです(浦和家裁昭和56年9月16日審判)。 

(4)面会交流に係る合意事項の不遵守 

また、過去に、面会交流に関して両親双方が合意した事項を遵守しなかったことがあるなど、合意事項を遵守しないおそれのある場合には、面会交流が制限されることがあります。 

裁判例では、元妻と子どもの居所を執拗に追跡したことにより接近禁止の仮処分命令の下されたにもかかわらず、子どもの通う学校で待ち伏せなどをした非監護親に対して、面会交流を認めないとした例があります(東京家裁平成13年6月5日審判)。 

3 面会交流の決め方 

親子間の交流にまったく夫婦間のいさかいのない場合、特に合意をしないケースも珍しくありません。例えば、子どもが会いたいときに自由に両親やその実家を行き来できるような面会交流の在り方は理想形のひとつであり、特に制約を設ける理由はありません。 

しかし、面会交流が円滑に行われない場合、面会交流の回数や子どもの受け渡しの方法などを明確に合意した方がよいでしょう。 

合意の方法として、夫婦間の協議、調停、審判が考えられます。

(1)夫婦間の協議 

調停や審判は、解決まで時間がかかり、その間、子どもと会えない場合も少なくありません。また、審判で裁判所が決めた面会交流の方法を守らない監護親も中にはいます。 

夫婦間で協議して合意することで、夫婦双方が合意できる内容を柔軟に取り決めて面会交流の実施につなげることができます。また、問題が生じた場合に変更することに妨げがないという利点もあります。 

(2)調停 

調停としては、離婚調停の中で面会交流について話し合う方法と、面会交流調停とがあります。 

調停では、DV等、面会交流が認められない事情があるケースを除いて、原則として面会交流を月1~3回程度のペースで行うように勧められることが多いです。 

調停は概ね月1回のペースで開催されるため、その間に、実際に面会交流を行うことができるか試行的面会交流が行われ、調停委員や家庭裁判所調査官の監督の下で面会交流の実施環境が整えられます。 

また、家庭裁判所調査官は、調査官調査を行い、適切な面会交流の実施方法について調停委員会に報告を行うことがあります。 

(3)審判 

調停で面会交流の合意がまとまらない場合は、自動的に審判に移行し、裁判所が面会交流の実施について審判を行います。 

4 面会交流について定めておくべきルール 

(1)面会頻度 

面会頻度とは、非監護親と子どもが面会交流をする回数を月何回にするかという内容です。子どもの生活スケジュールを踏まえて過度な負担なく実施可能な頻度とすることが望ましいです。 

(2)面会日時

面会時間は、面会交流の日付や、受け渡しの期限となる時刻を定めるものです。はじめの時刻、終わりの時刻それぞれに、確実に受け渡し場所に子どもを連れて現れることを考慮して定めましょう。 

(3)面会方法 

子どもの受け渡し場所や受け渡し方法、プレゼントや食事、お菓子などのルール、学校行事への非監護親の参加方法など、面会交流の具体的な方法を定めます。 

(4)面会場所 

面会場所については、定めないことが多いですが、夫婦間で子育て方針に大きな差があり、ゲームセンターなど特定の施設に連れて行ってほしくないといった意向が特に強いケースでは、具体的な面会交流の場所を定めてそこで面会交流をしてもらうこととする場合があります。 

(5)面会交流条項の例 

 原告は、被告に対し、被告と子らとが、以下の日時、場所及び方法で面会交流することを認める。ただし、原告及び被告は、誠実に協議の上、合意により、1回あたりの面会交流の時間を定めるほか、日時、場所及び方法を変更することができる。 

(1) 日時 

 月1回、毎月第1土曜日、午前10時~午後3時 

(2) 場所 

 子らの福祉を考慮して被告が定めた場所 

(3) 方法 

ア 子らの受渡場所は○○店駐車場(所在地:○○県○○市0000)とし、原告は、面会交流開始時に、受渡場所にて子らを被告に受渡し、被告は、面会交流終了時に、受渡場所にて子らを原告に受渡す。 

イ 子らの部活動、傷病、被告の傷病その他やむを得ない事由により本項(1)の日時に面会交流の実施が困難な場合、原告及び被告は、子らの福祉を考慮して代替日を定める。 

ウ 原告は、被告が子らの入学式、卒業式、運動会等の学校行事に参列することを妨げてはならない。

 5 面会交流の履行確保 

(1)履行勧告 

履行勧告とは、家庭裁判所の調停や審判などで決まった面会交流の義務を守らない人に対して、家庭裁判所がその義務を履行(実行)するように勧告する手続きです。 

調停や審判を行った家庭裁判所に申立てて勧告を行ってもらいます。手数料はかかりません。 

履行勧告が実施されると、裁判所から相手方に対して、調停や審判などで具体的に定められ、調書に記載された内容に従うように求められます。ただし、この時点では強制力はないため、相手方が履行勧告に応じない場合、履行を強制するには、次の強制執行の手続に進む必要があります。 

(2)強制執行 

強制執行とは、調停や審判などで具体的に定められた事項を執行手続きによって実現しようとするものです。面会交流の強制執行として想定されるものは、執行官が直接、子どもを監護親から取り上げて非監護親に引渡す直接強制と、監護親に対して、子どもを面会交流させるまで日額または月額などで制裁を科す間接強制とがあります。 

しかし、現在、面会交流の強制執行として直接強制をすることはできないとされており、間接強制を行って金銭的負担により間接的に面会交流を促す対応が取られます。 

(3)損害賠償請求 

面会交流を阻害されたことに対する精神的苦痛などの損害の賠償を請求し、金銭的負担により間接的に面会交流を促すことが考えられます。 

6 面会交流時の注意点 

(1)面会交流のルールを遵守する 

面会交流で合意した内容は遵守するように努めましょう。具体的な日時が決まっている場合、子どもの急病などでその日時に面会交流を行うことが困難な場合は、速やかに非監護親に連絡を取って、代替日時を定めるなど、不信感を持たれない対応が望ましいです。 

面会交流のしおり(家庭裁判所)

(2)正当な理由なく面会交流を拒否した場合のリスク 

ア 親権者変更のリスク 

面会交流は子どものために行うべきものとされていますので、面会交流の実施状況は親権者の判断の重要な要素のひとつです。面会交流を正当な理由なく実施しないでいると、それが親権者の判断にあたって不利に働き、親権者・監護権者の変更を求められるおそれがあります。

 

イ 養育費支払のリスク 

子どもは商品ではありません。そのため、養育費と面会交流は対価関係にはありません。 

しかし、面会交流を正当な理由なく拒否していると、相手方から不信感を持たれ、養育費が支払われなくなるリスクが高まります。また、間接強制などで自分が支払義務を負い、養育費と相殺されるリスクもあります。 

7 面会交流方法・条件の変更 

一度合意した面会交流の内容であっても、円滑に実施できないことが合意後に判明した場合には、再度の面会交流調停・審判においてより具体的なルールを設定することが考えられます。 

当初決めた日に面会交流が実施できなかった場合の代替日を予め定めたり、受け渡し場所や時間などを具体化するなど、強制執行に適した具体的内容とする場合があります。 

また、従来は休日に面会交流を行っていたが、子どもが進学して部活動を行うようになり、休日に試合が行われるため、面会交流は他の日にしたいといった事情が生じる場合があります。子供の成長等に伴って、より望ましい内容に変更する場合があります。 

8 まとめ

以上のとおり、面会交流の取り決めや履行を求めるには、個別具体的な事例に応じて、弁護士の判断を仰ぐことが望ましいです。 

G&Sでは、両親と子どもの関わり合いや家庭環境、子どもの意向などを踏まえて、経験豊富な弁護士が個別具体的な事情に応じた最適な方法を考えて面会交流の協議や調停などを行います。面会交流については、G&Sまでお気軽にご相談ください。 

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弁護士法人G&S法律事務所

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