セクシャルハラスメントの基礎知識
目次
1 セクハラとは
「セクシャルハラスメント」(セクハラ)とは、広く相手方の嫌がる性的言動をいいます。セクハラは大きく対価型セクハラ、環境型セクハラの2種類に分類されています。
タイプ | 概要 | 具体例 |
---|---|---|
対価型セクハラ | 職務上の地位を利用して性的な関係を強要、それを拒否した場合に不利益を負わせるもの | ・上司が性的な関係を要求したが拒否されたので不利益な人事考課をおこなう ・上司の職場内での性的な発言に対して抗議した者に支店での配置転換をおこなう |
環境型セクハラ | 性的な関係は要求しないものの、職場内での性的な言動により働く人を不快にさせ、職場環境を損なうもの | ・職場で性的な話題を口にする ・恋愛経験を執拗に尋ねる ・歓送迎会などで隣に座って酌をするように強要する ・業務と関係のないLINEなどを執拗に繰り返す |
何がセクハラに該当するかについては、平均的な労働者の感じ方を基準に判断するものとされ、当該性的言動によって平均的な労働者が精神的苦痛を負うものについてはセクハラと判断されます。
2 セクハラを受けてしまったら
セクハラのうち程度の酷いものについては不法行為が成立し、損害賠償責任が認められる場合もあります。さらに身体的接触を伴ったり、職務上の地位を利用して相手方が望まない性的な関係・行為を強要したとなれば迷惑防止条例違反、強制わいせつや強要罪の対象にもなりかねません。
また、男女雇用期間均等法11条において会社はセクハラを防止するための雇用管理上の必要な措置を講ずることが義務付けられ、これを受けて厚生労働省において「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」が制定されているように、会社はセクハラによる環境悪化を防止するべき職場環境配慮義務を負っていると考えられているところ、当該義務に違反したことや使用者責任(民法715条)を理由に会社に対して損害賠償を請求することも考えられます。
そのため、セクハラの被害に上司や会社に対してセクハラ行為の中止や是正、責任追及を求めていくことが考えられますが、その際には、どのようなセクハラ行為が行われたかを立証するための証拠が重要となってきます。
証拠としては、セクハラ行為・言動を録音したスマートフォンやICレコーダー等の録音記録はもちろん、何月何日にいかなるセクハラ行為・言動がなされたかを記録した手帳・日記なども重要な証拠となり得ます。また、同僚の協力が得られるのであれば、同僚にセクハラ行為の内容を証言してもらうことも考えられます。
ただ、このようなセクハラの被害にあっている場合、身近な人間にはなかなか相談しにくく、また、実際に上司や会社に対して是正や責任追及を求めていくことは非常にハードルが高いものです。
会社での内部通報窓口に相談することも方法の一つですが、それにより必ずしも解決できるとも限りませんので、お困りの際には弁護士への相談をご検討ください。