隣接地との間で生じるトラブルに、境界確認・確定があります。実務上、土地の売買時など土地の特定が必要な場合には、土地の地番をもって売買対象となる土地を特定とします。
しかし、地番が示す土地の範囲を明らかにするための不動産登記法14条1項の地図は、全ての地番には備わっておらず、14条1項地図がない場合に用いられる公図(同14条4項)の精度にはばらつきがあり、物理的に土地の範囲を特定するに足りない場合があります。また、特定の1つの地番によって特定される一筆の土地と土地の境界線(筆界)と、ある人が所有権を持っている土地と他の人が所有権を持っている土地の境界線(所有権界)は、他の人の土地の所有権の一部を時効取得した場合などに、不一致が生じることもあります。そこで、境界確認を行う必要が生じますが、関係者の協力が得られない場合には、筆界特定制度や境界確定訴訟といった公の手続きをとることになります。
また、2023年4月1日施行の民法改正により、相隣関係規定が改正されており、①隣地使用権の内容に関する規律の整備、隣地使用が認められる目的の拡充・明確化、②他の土地にライフラインの設備(電気、ガス又は水道等)を設置する権利、他人が所有するライフラインの設備を使用する権利の明確化、③隣地から越境した竹木の枝を、越境された土地の所有者自ら切除できる権利が規定されました。
加えて、日本は道路の幅員が狭いところが多いため、接道義務やセットバック義務をめぐる争いや、袋地通行権(囲繞地通行権)の通行場所や対価を巡る争いも多くみられるところです。
その他、隣地使用、騒音・振動、水漏れ、日照権など、相隣関係のトラブルは多岐にわたります。
以下では、隣接地との境界確認・確定、2023年4月の民法改正による相隣関係規定の見直し、接道義務・セットバック義務、囲繞地通行権など、相隣関係において生じ得る法的問題点について、解説いたします。